「宅配便です」
「はい」

岩城が受領書にサインをして宅配業者にわたすと、彼は、怪訝そうな表情をした。
さもありなん。差出人住所も受取人住所も同じなのだから・・・・・・・・。

差出人の名前は「香藤洋二」。
・・・・・・同じ家に住んでいるのだから、リビングにでも置いとけばいいだろう? という岩城に、「それじゃあ誕生日プレゼントの意味がないでしょ!?」という香藤の謎の理論に押し切られ、岩城はしぶしぶ荷物を受け取った。
ちなみに、くだんの困った恋人は、日本からは遠い空の下。
急遽入ったファッション雑誌の取材のため、岩城の誕生日当日の今日、アメリカにいる。

・・・・・・仕事に行けと言ったのは、岩城だった。だから、言えない。

「香藤・・・・・・」

(プレゼントよりも・・・・・・・・)

・・・・・・行けと言った本人がそれを否定するのは、フェアーじゃないだろう。岩城の唇からこぼれかけた言葉は、音になることなく、寂しげにゆらりとたわんだ。
ぱたりとリビングのドアーを閉めて、岩城はそっと、宛名書きを撫ぜる。
まるっこく、おおらかな、香藤そのもののような字。

「まったく、あいつは・・・・・・」

岩城が小脇にかかえた「プレゼント」は、布団でも入っているのかと思うような、巨大なものだった。
カッターナイフを取ってきて、慎重に小包を開いてゆく。
中に入っていたのは大きな紙袋よっつと、小さな紙袋がひとつ。

「・・・・・・?」

なぜ、小分けにされているのだろう?

小さな方にはハンカチが4枚、大きな方は・・・・・・。
まず、ひとつめの紙袋には、カーディガンとマフラー。ふたつめの紙袋には、絹のスカーフと折り畳み傘。みっつめの紙袋には、サングラスとサンバイザー。よっつめの紙袋には、大判のストールと手袋。

「???」

ストールやマフラーは解る。岩城の誕生日は真冬、衣類をプレゼントするならこういうラインナップになってもおかしくはないだろう。が、サングラスやサンバイザーはどう考えても夏のものだ・・・・・・。

(・・・・・・夏? そういうことか・・・・・・!)

プレゼントは合計「12個」。
それの意味することは・・・・・・。
カーディガンとマフラーは「冬」。サングラスとサンバイザーは「夏」。
贈り物に託されたメッセージは・・・・・・。


岩城は、物のかたちをした香藤の心を、ぎゅっと抱きしめた。


春も、夏も、秋も、冬も。
そばにいるときも、いないときも、どんなときも。
あなたのそばにいる。