・・・・・・月の光が妬ましい。
つかの間の眠りに沈むお前を、わが物のごとく照らしてる。
いっそ今が闇夜なら、お前を攫ってゆけるものを。

撫ぜるように、愛でるように、月の光がお前の姿形をなぞってゆく。
惜しげなく曝された裸身。
うねるたてがみ、すっと通った鼻筋、生命の輝きに満ち溢れた瞳が閉ざされているせいか、高貴さ際立つ美貌。

・・・・・・独り占めすることはできない。
生命が生命であるがゆえに生命を慈しむお前。老若男女はおろか、野生動物ですら惹かれ、群れ集う。

美しい男。
日の光に愛された褐色の肌を、官能的な甘さをたたえた唇を、ねぶるように、這うように伝う、月の光。
・・・・・・羨ましい、妬ましい、いっそお前を攫ってゆけたなら・・・・・・!

・・・・・・駄目だ。
出来なくはないが、したくない。

手のひらに落ちてきた太陽。
お前という光を喪ってまで、この恋を進めようとは思わない。
閉じ込められた光はもはや光ではなく、いかに愛おしもうとも、摘めば、草木は枯れるのだ。

けど・・・・・・。

真っ白なシーツの上に落ちた真っ黒な人影に、そっと口付ける。

・・・・・・この影だけは俺のもの。俺だけのものだ・・・・・・。